イベントレポート

XVL 3次元ものづくり支援セミナー2010 講演レポート

セミナーでの講演をレポートで公開します

事例紹介

ユーザー講演

XVL Studio によるサービス資料イラスト作成の削減効果

本田技研工業株式会社
カスタマーサービス本部 技術開発部 サービス情報統括ブロック 主任

濵川 智仁 様

本田技研工業株式会社
カスタマーサービス本部 技術開発部 サービス情報統括ブロック

齋藤 志穂美 様

本田技研工業の概要とサービス資料の活用

本田技研工業株式会社は、2009 年度に自動車は 352 万台、自動二輪車は 1,011 万台、そして発電機などの汎用製品を生産している。さらに、ソーラーパネル、ロボットやジェット機などの新規事業も行っている。

埼玉県和光市にあるカスタマーサービス本部技術開発部では、オーナーズマニュアル、パーツカタログ、サービスマニュアル( 構造編、シャシ編、ボディ編、配線図集 )の 6 種のサービス資料を作成している。これらを国内、北米、南米、欧州、中国含むア大地域へ情報提供を行っている。

サービス資料作成の取り組み

2008 年度に、データの入手ルートやそのためのインフラの整備を行った。サービス資料のイラストの元となる CAD データは、栃木の本田技術研究所で作成され、栃木の本田技研工業の四輪新機種センターを経て、車両 1 台分の XVL データが本田技研工業技術開発部に届けられ、資料作成に生かされている。

実際に、『 FREED 』 のデータを入手し確認したところ、サービスとして使用できる状態のデータの充足率は、約 6 割という結果だった。この充足率は、部品ライブラリを駆使して向上させる必要があった。

パーツカタログの取り組み

従来のイラスト作成では、写真や 3D データ、図面をもとに手作業でトレースし、さらに Adobe Illustrator を使って編集していたが、新フローでは XVL を活用することになった。 XVL からの線画の出力は、ボタンを押すだけの簡単な作業のため、大幅な工数削減が実現できた。

従来の方式では、レイアウトに 30 秒、写真のスケッチに 150 秒、トレースに 500 秒で、合計 680 秒を費やしていたが、XVL 方式にしたところ、レイアウトにかかる 30 秒のみでイラストが作成できる。つまり、工数は従来比約 1 / 20 となった。

また、これまでは、イラスト作成の難易度によって、10 段階に分かれていた価格も、XVL を活用することで、1 単品あたりの価格を統一することができるようになり、従来に比較して、大幅なコスト削減を実現した。XVL の活用は、工数とコストを劇的に削減した。

1 冊のサービスマニュアルに掲載されるイラストの数は、少ないものでも 200 点以上、多いものでは 5,000 点を超える。

これまでは、取材車を写真撮影したものや 2D 図面、CAD や 3D ビューワの画面キャプチャなどを手作業でトレースし、スキャンしたものに編集や補正を加えてイラストを作成していた。そのため、作業工数が増え、多大な費用がかかっていた。

そこで、XVL ファイルからの線画を出力の活用を試みたが、不必要な線を削除する作業に工数がかかることがわかり、新規のイラストは、シェーディングの絵、つまり 「 面画 」 を利用することにした。こうして、2009 年度には、『 Step-WGN 』、『 Accord 』、『 Acty 』、『 CR-Z 』 と 4 機種での運用が行われた。

整備マニュアルの作成事例

従来の線画を使った整備マニュアルのイラストは、線が重複し、説明箇所や部品がわかりにくい箇所があった。XVL から作成した面画を活用し、色の濃度で見せたい箇所を強調表現することで、見易さが向上している。また、手書きのイラストも併用することで、よりわかりやすいイラスト作りを実現した。

オーナーズマニュアルの取り組み

これまでの写真撮影からトレースしてイラストを作成した 『 FREED 』 の線画イラスト全 351 枚に関して、これまでのプロセスと新しいプロセスでの比較を実施した。

まず、351 枚のイラストがすべて XVL を使った方法で制作できるかを検証したところ、一部のデータが不足しているものや、人や物の映り込みがあるものなど、いくつかのケースはそのままでは対応できないものが見つかった。しかし、約 7 割のイラストは問題なく作成できることがわかった。

次に必要なイラストを容易に制作できるかを検証した。XVL でデータが軽量化され、同時に約 20 のユニットごとのカテゴリ分類を作成しておくことで、必要なユニットを手際よくそろえてアングルを決め、イラスト作成が可能になり、イラスト制作の効率化が行えた。

さらに、線画、3D 白黒イラスト、3D カラーイラストの 3 種類のイラストが問題なく作成できるかを検証した。たとえば、ナビゲーションの画面やメーターなどについては、従来どおりの線画を利用することとしたが、3D 白黒イラストと 3D カラーイラストに関しては、XVL を活用できることがわかった。

イラストの品質 ( 見栄え ) は、CG ソフトで加工している製品カタログや CM などの上質感は工数や費用が掛かるので求めていない。ここでは、ある程度製品の機能が理解できるような加工 ( 中質 ) に留めている。( 上中下の中レベルを追求 )

オーナーズマニュアルのイラスト制作では、最終的に約 40 % の工数削減が実現できており、量産機種に展開できる見通しがたった。成果物としては弊社のホームページ( 取扱説明書閲覧サービス )より閲覧が可能である。

まとめ

これまでのイラスト作成への XVL 活用の取り組みにより、パーツカタログ、整備マニュアル、オーナーズマニュアルの業務効率化が行えた。これからさらに低コストで高品質のイラストを作成するための施策として、以下を実施したいと考えている。

車両 1 台のデータの部品点数は 6,000 ~ 1 万点ほどになるが、約 800 MB あった XVL データのファイルサイズは、 U-XVL の適用で約 700 MB まで削減できた。また、必要な構成部品を早く集めるために、XVL Reducer や XVL PDM Connector の検証を進め、部品番号から構成を自動生成させる方法の構築を検討している。

XVL での線画出力に関しては、より余剰線の少ない状態で線画出力が行えるように検討している。既存の 64 bit パソコンでのレスポンス向上のために、64 bit 対応の XVL Studio が出たら採用を検討したい。

これからは、代表的なモデルに限定した実施ではなく、全機種でのデータの構築を行い、適用範囲を拡大していくことや、データを中心にサービス資料を有効的に使用できるよう 「 ワンソース、マルチユース 」 を推進していきたいと考えている。

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