イベントレポート

XVL 3次元ものづくり支援セミナー2011 講演レポート

セミナーでの講演をレポートで公開します

事例紹介

ユーザー講演

車両開発・生産・製造準備における 3D デジタルエンジニアリングの活用
< 品質向上を軸とした日本のものづくりの再生 >

トヨタ自動車株式会社
元町工場 総組立部 部長(元 車両品質生技部 部長)

佐野 和広 様

車両品質生技部の位置付け

車両品質生技部の位置付けは車両開発段階において設計・技術と生産現場をつないでより良い製品、より良いものづくりを行うための設備、工程を考える部門である。本年度から全社一丸の品質問題に取り組むべく、 “ 品質 ” が部の名前に付加され車両品質を生産技術目線で見ていく部門とした。

日本ものづくりの再生

設計は 「 良い図面 」 を作ることを目的にやっている。

「 良い図面 」 とは、要求される製品機能を図面通りにつくればその機能が保証されるものだ。また、生産技術は、条件通りに造れば図面通りの品質が保証される。この 「 良品条件 」 仕様を作成している。製造部門では製造設備、ラインを維持管理し 「 良い図面」 、 「 良品条件 」 に基づき標準作業を行えば良品だけできる。

IT の役割はこの設計、生産技術、製造のプロセス間で “ 抜け ”、“ モレ ” の発生を防ぎ、効率的な業務を行えるようにすることだと考えている。つまり、業務プロセス・しくみに潜む本質的な課題を見える化し、その課題に地道に愚直に取り組むことが重要である。

私が危惧しているのは、3D で製品の形が出来き、見えてしまうと、“ いいものが出来た ” と、錯覚し勘違いしてしまうことである。

なにをもって品質なのか、見えていないケースもあるのではないか。このような勘違いをせず、物事の本質を見極める力が今は特に必要なのではないか。ものごとの本質を理解した上で、現地・現物( リアルな世界 )と 3D( バーチャルな世界 )をうまく融合させていくことが、これからの日本のものづくりを支え再生させていくものだと考えている。

製品開発力を強化するため、生産においては ERP を導入するお客様が増えている。しかし、ERP を導入した後の方が大変だという声をよく聞く。ERP にはリアルタイムに BOM 情報の投入が必要だが、頻発するマイナー設変の BOM 作成時間がボトルネックとなっている。

この問題を解決するためには、設計 ~ 生産に至る各部門の連携に必要な編集処理を高速に処理する必要がある。

品質を軸としたデジタルエンジニアリングの取組み

車両生産技術の活動は大きく工程・設備計画と品質計画に分けられる。これらの活動において利用するデジタルエンジニアリングツールとして XVL を活用し始めた。工程・設備計画におけるの適用事例として以下などがある。

  1. 組立順序に沿った各部品成立性の確認
  2. エンジンのような大規模部品搭載時の成立性の確認
  3. 工具スペース・作業姿勢の確認
  4. 組立ライン完成度の事前確認
  5. 各種管理帳票への検討内容の反映

また、品質計画業務においても XVL を活用している。設計図面には守るべき品質が織り込んであり、工程では標準作業がきちんとできれば品質は作りこまれてくるはずである。しかし、現地・現物の世界では様々な問題が発生するため、品質目線において早期段階にデータで品質問題を確認、検討している。具体的には以下などである。

  1. 異音、火災発生源等の信頼性確認
  2. 作業性確認
  3. 車両フレーム No. 視認性確認
  4. 動的な品質確保のための作業性確認
  5. 設計意図通りの完成度を工程毎で確認

XVL は、スムーズに 3D を扱えるため検討時間の短縮が図れ、品質にこだわった検討を行うこと可能である。また最近、公差解析ツールを利用し動的な部品に対して精度がどのように影響するかの解析を始めている。実際の部品加工精度はゼロではなくバラつく。このバラツキを押さえ管理し、結果を設計にフィードバックすることで品質を確保するような活動である。

まとめ:今後の更なるIT 活用を目指して

今後の IT 活用の目指す方向は、各部門に散在している千差万別な品質情報を一元化し再利用していくことだろう。お客様が持っている情報をいかに吸い上げデータ化し、設計や生産、サービス、営業に反映して利用していくことがポイントだと考えている。

デジタルエンジニアリングの世界は今後も大きく進化していくであろう。バーチャルがよりリアルに近づいていく。

しかし、先ほど述べたようにバーチャルな表示を見ることで、実際の製品ができてしまったような勘違いを起こしてはならないということ。IT ツールやバーチャルなデータを取り扱う人間はより高い意識レベルが必要である。

つまり、 “ 現地・現物 ” の心や物事の本質を見極める力をもった人間が、便利な IT ツールを使って仕事として共存させ、進化させていくべきである。

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