海外工場における XVL の活用
常石造船株式会社
設計本部 執行役員 設計本部副本部長
芦田 琢磨 様
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事例紹介
常石造船株式会社
設計本部 執行役員 設計本部副本部長
芦田 琢磨 様
常石造船株式会社(以下、常石)はツネイシホールディングス株式会社の子会社として広島県福山市に本社を構えている。ツネイシホールディングスは国内7社、海外10社の合計17社からなり、造船事業/海運事業/環境エネルギー・サービス事業の3つの事業を中心に展開しているグローバルカンパニーである。ツネイシホールディングスの中で造船事業を担っている常石は、国内では2箇所に工場を有し、海外ではフィリピンのセブ島と中国の秀山にそれぞれ工場を有している。商品はタンカー/ばら積貨物船/自動車運搬船/木材チップ船等である。
造船は受注/契約後に設計を開始し、契約から引渡しまで 2.5 年から 4.5 年の長い期間をかけ建造している。取扱う製品は部品点数が数十万点にも及び、しかも全長 300 メートルの製品となるにもかかわらず、製造にはミリ単位の精度が要求されるため、大規模なデータを扱いながら詳細に検討を進める必要がある。
例えば自動車などの大量生産をおこなう業界では、生産に入る前に事前に試作品を作り十分な検証を行い、万全な状態で生産に入ることが可能である。これに対し造船業は製品が大きな建造物であるため、試作品を作ることができず試作品による検証、フィードバックができないという特徴がある。
常石では商品によっては 100 ~ 200 隻以上建造することがあるが、最初の 1 隻目で失敗をしてしまうと、以後に建造される船舶でも同じ失敗を繰り返してしまうという恐れがある。そのため試作品を作ることができない造船業の製造過程においては、商品企画段階で実施する事前レビューが非常に重要になってくる。
常石では設計品質・生産性向上のため、この事前レビューの強化を進めていたが、それでも生産過程では以下のような問題点が発生していた。
これらの問題の主な原因は以下3点である。
これらの問題を解決するために、常石では 1997 年に造船専用の 3D CAD を導入した。しかし 3D CAD 導入後も製造現場で設計の不具合や組付けミスが発生した。3D CAD を導入しただけでは生産過程の問題を事前に解決することはできなかった。
そこで製造現場の問題解決に向け、企画段階で製造現場向けのデザインレビューを強化する目的で、2007 年に XVL を導入した。XVL 導入により 3D モデルによる事前レビューを強化できたと考えている。 常石の XVL 導入効果は、以下 3 点である。
以前はまず、国内で 1 隻目を建造し、設計上の問題点や現場の組付けミスを洗い出してから、生産拠点を海外に移転していた。しかし現在は、 1 隻目から海外で建造する方針としたため、海外工場でも 1 隻目から滞りなく造り上げることが常石の使命となった。
常石は海外工場の 1 つをフィリピンのセブ島に有している。フィリピンの特徴は農林水産業が主要産業であり、工業製品の就業人口は全体の 15 % 程度であるため、国民全体が製造業になじみが薄いということである。 当初常石は造船の製造工程について、現地作業員に対してわかりやすい組立手順書を作成し展開することに取り組んだ。
しかし、実際に作業する現地作業員は英語が話せないため組立手順を正確に伝えることができず、” 言葉の壁 ” が大きな問題となった。 そこで、常石は ” 言葉の壁 ” を越えるため XVL を導入し、3D データを使ったレビューや教育を試みた。主な取組みとその効果は以下の通りである。
1.生産計画の3Dアニメーション表
2D 図面では全体像が分かりにくかったブロック搭載工程表を XVL による 3D アニメーションで表現し、各ブロックに搭載納期を明記した。これにより、作業員が今作っているブロックが全体のどこの部分に該当し、納期はいつかということを見るだけで理解できるようになった。
2.詳細工程の検討・確認3Dアニメーション表示
2D 図面と文字だけでは伝えることが難しかった船殻やパイプの工作手順を 3D アニメーションで表示した。これを現場責任者へ事前に見せることで、現場責任者が組立上の注意点や問題点を容易に理解でき、作業内容がイメージしやすくなった。また現地作業員へも間違いやすい組立手順を、正確に伝えることができるようになった。
3.設計-現場を 3D によるデザインレビューや 3D モデルによる精度チェック
XVL の導入の派生的な効果として、3D データによるデザインレビューを行い作業員の作業スペースの確保や取付け順番に不具合が無いかを容易に確認できるようになった。また曲面を持った部品を搭載する際に、事前に曲面の精度チェックを行うが、以前は 2D 図面や口頭で精度チェックを行う箇所を指示していた。しかし、 3D データを利用することにより、精度チェックの計測箇所を以前よりも正確に伝達し認識させることができるようになった。
常石は XVL の導入で、フィリピン工場で生産過程において上記のような効果をあげることができた。しかし、当然今後の課題もある。 例えば、全ての部品が 3D CAD に入力されていないため、一部の手順書やシュミレーションには 3D データが利用できないという問題がある。また、常石ではワークデザインといって部品を置いたら何時間何分で取付けるといった配材についての手順書があるが、そのワークデザインと 3D データの接続が現状ではうまくできていない。
その他、造船の製造現場では巨大な部品を動かさず作業員が何百メートルも移動して作業を行っているため、作業員が PC 端末を持って移動するとことが実際には難しく、3D データを閲覧しながら作業するということができないという問題がある。 今後はこれらの課題を一つずつクリアしていくことが必要である。
常石が考える海外工場における XVL の適用効果は以下の 3 点である。
XVL は大容量データを扱うことが可能であるため、旧モデルと新しいモデルを重ね合わせ、その差分を容易に確認することができる。また、言葉や文化の違いにより伝えることが難しかった作業内容を、3D データを自由に参照することで正確に伝えることができる。さらには事例で紹介したように生産現場での事前検討、レビュー、教育、組立指示に有効に活用できるのである。
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