日野自動車における 3D 図面化の取り組み
~ 3D データの活用促進活動 ~
日野自動車株式会社
デジタル開発推進部
PLM推進室
室長
宮下 敏明 様
イベントレポート
セミナーでの講演をレポートで公開します
事例紹介
日野自動車株式会社
デジタル開発推進部
PLM推進室
室長
宮下 敏明 様
2018年5月11日(金)東京、8月3日(金)名古屋で開催された 「 XVL 3次元ものづくりセミナー2018 」 ユーザー講演では、 ” 日野自動車における 3D 図面化の取り組み ~ 3D データの活用促進活動~ ” と題して、日野自動車株式会社 デジタル開発推進部 PLM推進室 室長 宮下敏明氏より、同社における 3D データ活用の取り組みの経緯や詳細について紹介を行った。
日野自動車の設計部門では既に CATIA V5 を使った 3D 設計の手法が導入されており、またここで作られた 3D データの後工程における活用もかなり進んでいる。しかしそれでもなお、いまだに紙の図面がなかなか手放せない業務も残っているという。
「 車両への部品組付を設計から指図するための 『 組立図 』 と、これを基に実際の組付順などを指示する 『 工作図 』 がいまだに紙で運用されていた。これら紙図面の作図を、膨大な数の製品バリエーションごとに行っていたため、多くの工数が掛かっていた。そこでこれらを 3D 化することで、全体の工数を大幅に削減できるのではないかと考えた」(宮下氏)
具体的には、CATIA V5 から XVL データを出力して XVLReporter (以下 Lattice3D Reporter )に登録し、さらに管理情報も付加した上で 3D の組立図を作成する一連の作業を、ほぼ自動的に行う仕組みを構築した。後工程での使い勝手を考慮し、まずは従来の紙図面のフォーマットを踏襲した 3D のレポートを Lattice3D Reporter 上で再現した。
こうした仕組みを導入し、部品や車両組付状態を 3D で確認できるようにした結果、従来の紙図面の確認より大幅に工数が減り、設計の作図工数を当初の目的通りほぼ半減することに成功した。
ただし、組立図の内容を基に後工程で作成する工作図に関しては、3D 活用の環境やスキルが現場にまだ浸透しきっていないため、思うような効果が発揮できていないという。従って今後は、後工程の現場に対する 3D 活用の教育やサポートの施策に力を入れていきたいとしている。
これ以外にも、検査部門や社外の仕入先などでは紙図面の運用が多く残っているため、現在これらの業務に対する 3D 図面の導入を進めているところだという。
「 こうした現場では、3D 図面と紙図面の両方を作成・管理する必要があり、その分工数が嵩んでしまう。また、基本的には 3D 図面の内容を正とする運用ルールを定めているが、場合によっては紙図面のみ変更を加え、3D 図面に変更が反映されないといったことが生じる危険性もあり、そうした運用が続くうちにデジタル化の取り組み全体が停滞しかねない 」(宮下氏)
そこで同社では現在、こうした現場にも 3D 活用を根付かせるべく、3D 単独図の運用へと一足飛びに移行するのではなく、まずは 「 3D 図 + 2D 簡略図 」 という 3D と紙のハイブリッド運用にいったん移行することで、段階的に全 3D 化を進める戦略をとっている。
3D 図面の活用がもたらすメリットを現場に理解してもらうべく、推進部門の部員が社内の各設計部門や社外の仕入先に何度も足を運び、3D 図面を導入することで得られるメリットについて説明し、理解を求めた。また、紙図面を簡略化することで業務にどのような影響が生じるのか、詳細にヒアリングを行った。
こうして社内の複数の部門に少しずつ 3D 図面を導入していった結果、現時点では約 47% の工数削減という結果が得られている。また社外の仕入先においても、3D 図面の導入によって大幅な工数削減を実現した事例が出てきている。
仕入先の 1 社である国産機械株式会社との取り組みにおいては、加工と検査の工程に 3D 図面を導入したことによって、全工数の 28% を削減することに成功したという。
その反面、現場で 3D 図面を参照するための環境やスキルが不足しているなど、幾つかの課題も浮き彫りになった。今後はこれらを適宜改善していくとともに、3D の適用範囲をさらに多くの製品や工法に広げていくべく、検討を進めていきたいとしている。
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