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SPECIAL 対談|TID × ラティス・テクノロジー「ドイツのデジタルトランスフォーメーションと、これからのパーツカタログ」
2019年3月18日
TID Informatik GmbH(※ 現在、TID Informatik GmbH は Quanos Service Solutions GmbH(https://quanos-service-solutions.com/)に社名変更しておりますが、本対談記事では旧社名のまま記載させていただいております)は、1976 年にテクニカルドキュメンテーションのサービスプロバイダとしてドイツで設立された。2001 年に販売を開始したパーツカタログ制作用アプリケーション 「CATALOGcreator ©」 は、これまで 25 か国 360 社以上のライセンス販売実績があり、その約 4 割は XVL ベースの 3D デジタルパーツカタログ制作用として利用され、現在、3D デジタルパーツカタログ市場におけるデファクトスタンダードとなっている。今回は、ユーザ訪問のため来日した同社社長の Rafi Boudjakdjian 氏に、ドイツのデジタルトランスフォーメーションとこれからのパーツカタログについてお話を伺った。
ドイツといえば、Industrie4.0 発祥の地。製造業のデジタルトランスフォーメーションが随分と進んでいる印象があります。日本の製造業は図面王国でなかなかデジタルトランスフォーメーションが進まないと感じています。まず、最初にドイツの製造業で特徴的な点を教えてもらえませんか。
ドイツでは、2015 年ぐらいから CDO(Chief Digitizing Officer)という肩書の人間が急激に増えた印象があります。驚くかもしれませんが、ドイツには高いマーケットシェアを占めている企業が多く、何も変えたくない、という企業が多かったのです。以前は、デジタル化の部署は Finance 部門下に置かれていることも多く、金銭的な制約も強かった。しかし、CDO は他の CxO と同格の地位なのでお財布も握っている。当然、変革する力がこれまでと全く異なりました。CDO の登場と共に、デジタル化のスピードが劇的に変わったのです。
スキー場のスロープを作る圧雪車を製造している我々のお客様は良い例です。同社では既に高い市場シェアを占めており、それこそ何も変える必要はなかった。しかしながら、マーケットはスキー場の数に限られていた。彼らが、今まで以上に稼ぐためには、ビジネスを変革する必要があったのです。変革といっても、機械そのものを変えたわけではなく、GPS データを活用し、どこにスロープを作るかをデジタルで管理する、というビジネスモデルに変えたのです。これはソフトウエアの領域の話です。
少し話題を変えて、XVL との出会いを聞かせてください。我々がパートナー契約をしたのはかれこれ 15 年前、2004 年のことでしたね。
もともと私は、C言語のプログラマーで、企業でパーツカタログを作ってたのですが、人々がどれだけ紙が好きかを当時思い知らされていました。デジタルパーツカタログなんて、遠い遠い未来の話でしかなかったのです。当時は、ネット環境も整っておらず、普通に検索をしても 30 秒待たされる時代でした。
2000 年に XVL をリリースした当時は、まだ 3D で設計をしていない企業がほとんどでした。「XVL で 3D CAD データを百分の一にできます」 と言っても、驚いてはくれるのですがなかなか買ってくれない。XVL は時代の先を行きすぎていると感じていました。
当時から、アフターサービスの世界はデジタルになるべき、シーメンスやダッソーといった大手のベンダーとは独立したデータが必要だ、という 2 つの思いがあり、そんな中で見つけたのが、XVL でした。
ようやく、XVL と 「CATALOGcreator ©」 に時代が追い付いてきたと感じますよね(笑)。でも、遠く離れた日本の、当時は知名度もなかった XVL を使うという判断をするのに、ためらいはありませんでしたか?
全く、ためらいはありませんでした(笑)。なぜならば、当時から “Made in Japan” は、“信頼できるもの” の象徴でしたから。ソニーやパナソニックの製品はドイツの製品と同じく、信頼できて非常に効率的だった。だから、リスクは全く感じませんでした。
それで、実際に XVL を使ってみてどう思いましたか?
それは革命的な経験でした。お客様には、「3D CAD データのファイルサイズが 1/10 ぐらいになるよ」 と、実際より下回る数値を敢えて伝えておいて、実際は 1/100 ぐらいのサイズになる。お客様もすごい驚き、喜んでいました。それは、今も変わっていません。
データの軽量性は XVL の普遍的な価値だと思っています。自動車のようなデータ容量が大きいものをデジタルで検証可能にし、家電のようなデータ容量が小さいものはネット上でさくっと共有する。データの軽量性の価値を認めてもらっているからこそ、XVL のお客様がどんどん増えています。ところで、XVL で期待はずれだったことは何かありますか?
XVL に注文を付けるとすると、fancy じゃないことでしょうか(笑)。実運用する際に fancy であることは必要ありませんが、お客様の経営層にプレゼンする際には、そこが実は重要なのです。極端な話、現場部門が全く使わない機能だとしても経営層を説得する為には、そういった fancy なものが必要になるのです。
そこはエンドユーザーが直接利用する 「CATALOGcreator ©」 がカバーする部分ですね。
軽量 XVL と 「CATALOGcreator ©」 はお客様にとってもよい組み合わせでしょう。ドイツといえば、3D フォーマットの “ JT ” がありますね。Rafi は JT と XVL をどう見ていますか?
一言で言うと、JT は ”セオリティカル” で、XVL は ”プラクティカル” と感じています。JT が必要とされるのは、CAD から CAD に正確にデータ渡す時です。だから、いかに作業を迅速に進めるかが重要なサービス領域現場では、データ量の大きな JT には興味を示さないのです。
プラクティカルというのは良い表現ですね。Rafi の話は、私がこれまで国内の数多くの企業の方々と意見交換した結果、たどり着いた結論と一致するところですね。これからも、ラティスは、製造業のお客様にプラクティカルなソリューションを届け続けたいと思っています。ところで、2018 年にラティスはマルチデバイスに対応した XVL Web3D 基盤を開発しました。 「CATALOGcreator ©」 は世界でもいち早く、この XVL Web3D に対応しましたね。技術的なキャッチアップも、すごく早くて、TID 社の技術力を感じました。お客様の反応はどうですか?
ラティスの XVL Web3D は最高です。スマホ全盛のこの時代、スマホやタブレット、PC など端末を選ばず、ブラウザ越しに3Dデータに簡単にアクセスできる。プラグインもインストールする必要もないし、セキュリティーも担保できる。マイクロソフトがIEのサポートを終えるというのも、XVL Web3D に追い風です。
これまで会社に行って PC に向かわなければ仕事が出来なかった事が、今の時代はスマホで仕事を進められる。なんてたって、XVL があればスマホで3Dも見れる。
これは、あるお客様での笑い話ですが、競合会社のパッケージを入れてプラグインをインストールすることなく3Dデータが見れると自慢していたのですが、システム部門の方に話を聞いたら、実際はバックグラウンドで 3D データをインストールしているだけで、裏側のシステム部門はで、いつもてんやわんやしているという事でした(笑)。
日本国内でも XVL Web3D に対する関心が非常に高まり、最近では問合せの数も非常に増えています。技術的にも、まだまだ進化する領域だと思っています、車のような大規模データでも、タブレットで見れる技術を開発しているので、今後も楽しみにしておいてください。
それはとても良いですね。わくわくするような新技術を楽しみにしています。
日本では、未だ紙でパーツカタログを作ってという企業が少なくないのですが、デジタルのパーツカタログの価値について、改めて教えてもらえませんか。
考えてみててください。紙でパーツカタログを作ったら、次のアップデートは 1 年後? 2 年後?。パーツカタログを使うお客様も、そんな鮮度の低い、長い間アップデートされていないパーツカタログは許容しないでしょう。デジタルでパーツカタログを構築すれば、更新ボタンを押すだけで、最新情報にアップデートできるのです。
今の時代、通販でも、紙のカタログを見て電話や葉書で注文する人はほとんどいないでしょう。電話を掛けたらその商品は販売終了していますとか、在庫確認して配送日をご連絡しますといった対応は、許されませんよね。値段や在庫、配達日などのリアルタイムな情報を、ネットで確認し、すべての条件を理解した上で注文する。こういう日々の生活を送っていると、デジタルのパーツカタログの価値が分かるはずです。
それに加えて、昨今の製造業ではグローバルに製品を展開することも多く、ますます製品にバリエーションが増えています。車などは良い例ですが、クーペ、セダン、コンバーチブル、RV など。紙のパーツカタログでは、こういったバリエーションに対応するために人員を増やすしかありませんが、そんなに自由に人は増やせないですよね。ましてや減らすこともできない。デジタルで作れば人員を追加せずとも対応することができる。
インターネットショッピングの例は非常にわかりやすいですね。 「CATALOGcreator ©」 がドイツの生産性の高さに貢献しているのかもしれないですね。日本では、働き方改革や、ワークライフバランスが企業の課題となっています。デジタルのパーツカタログの提供はメーカーにとってもサービス会社にとっても、日本の働き方を大きく変える可能性をもっていますね。
ところで、最近のわくわくする事例を聞いてくれますか?
是非、聞かせてください。
ドイツの大企業から分社化された粉砕機を製造している会社の話です。その会社は、市場に追従していくのではなく、市場をリードしたいと考え、精力的に先進的な取り組みを行おうとしていました。PC ではなく、携帯端末上で 3D を見たいと考え、3D のみのパーツカタログを XVL Web3D ベースの 「CATALOGcreator ©」 で構築したのです。
機種ごとにパーツカタログを作りたい、柔軟性を担保するために独立したプラットフォーム上で構築したいと考えており、まさに 「CATALOGcreator ©」 のコンセプトにマッチしたのです。
彼らも新しい技術を採用するには非常に保守的だったので、POC を一緒に行い、自社のデータと携帯端末でパフォーマンスをテストしました。結果、十分なパフォーマンスが出ることがわかり採用となりました。
さらに、彼らはパーツカタログだけに留まらず、教育やメンテナンス含め、様々な領域において XVL を活用しています。携帯端末でのシステム利用をメインに据えており、トレーニングも携帯端末での利用を想定したものとなっている。今後は、中国を含め、ワールドワイドで展開すると聞いています。この会社の取り組みは、非常に先進的で、今後のモデルケースとなると思っています。
非常に面白い話をありがとうございます。Industrie4.0 の目指すマスカスタマイゼーションは、まさに顧客ごとにカスタマイズされた製品を提供すること、それを 「CATALOGcreator ©」 が支援しているということですね。ラティスの XVL がドイツの Industrie4.0 の一端を支えているわけですね。最後に、日本のお客様にメッセージをいただけますか。
Let’s go digital!
これからの時代、ビジネスを拡張していくには、お客様の満足度を満たし続けることがますます大事になってきます。先にも説明したように、Amazon などでのネットショッピングが日常になってきており、日々優れたユーザ体験をしていると、当然、お客様の期待値レベルはどんどん上がってきています。
パーツカタログの世界で満足度を満たすには、在庫、形状、価格、バリエーションなど、これらの情報が全て最新の情報に更新されているものを提供することが、必須になってきています。これは、紙のパーツカタログや人では、もはや成し得えません。
ドイツの企業も、大きくデジタルトランスフォーメーションへと舵を切っており、パーツカタログの世界で、我々はその一端を担ってきたと自負している今度は是非、日本の皆様の変革のお手伝いをしたいと思っています。
我々も、パートナーのデジタル総合印刷とともに、日本のパーツカタログの市場の変革を支えていくつもりです。今日は忙しいところありがとうございました。
「CATALOGcreator ©」 とは?・・・ ラティス・テクノロジー社の XVL をベースとした、ドイツTIDインフォマティク社の 3D/2D 対応の Web パーツカタログシステムです。電子パーツカタログに求められるカタログ提供者(カタログ製作の自動化、Web 配信、閲覧者に対するサービスの向上)と、カタログ閲覧者(部品検索の高速化、発注プロセスの簡略化)それぞれの要件を満たすシステムとして、欧州を中心に 350 社以上の企業がこのパッケージシステムを導入しています。3D データを活用して様々な自動化を実現、2D イラスト・Web3D・アフターパーツ・ドキュメントなど、あらゆるアフターサービス情報を連携したコンテンツの提供を可能にします。
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