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SPECIAL 対談|SUS × ラティス・テクノロジー
2022年10月6日
2022年
10月
“DX × 3D” を体現する新サービス・アルミプロダクトデザイナー ”apdX” ~お客様のイメージを具現化する仕組みを Web で提供~
今回の SPECIAL 対談は、アルミフレーム業界で国内随一の SUS株式会社で DX (デジタル・トランスフォーメーション) を率い、アルミフレーム製品を 3D で設計・構築していくアルミプロダクトデザイナー ”apdX” をリリースされた同社の取締役 渡邊 雅志 様にお話を伺いました。
鳥谷:
本日は、お忙しい中、貴重なお時間をありがとうございます。
アルミフレーム業界で国内随一の SUS株式会社
渡邉:
鳥谷さんとは、前職からのお付き合いになりますから、かれこれ 20年近いお付き合いになりますね。
鳥谷:
そうですね。過去に弊社のセミナーでご講演をいただいたこともありました。早速ですが、どのようなお仕事をされてきて今、DX 推進の責任者となったのでしょうか。
渡邉:
私は、某電機メーカーでメカ設計をしていました。1980年代、ビデオの設計に携わっていたのですが、必要精度が非常に厳しく、製造工程で傾きや高さを調整していました。つまり、生産能力は作業者に依存していたのです。私は、製造段階の調整を不要にし、設計段階で作りこみが出来るような設計手法を標準化することに注力していました。
鳥谷:
今で言うところのフロントローディングですね。
渡邉:
まずは、実験検討を繰り返し、その分析結果に基づいて、各種ツールを開発、事前に設計段階でシミュレーションできるようにしたわけです。効率的な解析システムを構築するために、1980年代の後半には 3D CAD も使い始めました。また社内で開発されていた 3D プリンターも最大限に活用してテープ走行系の開発を行っていました。
鳥谷:
今と変わらないような先進的なものづくりをされていたのですね!その頃は、まさにバブルの時代、日本の家電メーカー全盛期でしたね。
渡邉:
確かにバブル真っ盛りで、どこの家電メーカーもイケイケでしたね。その後、私は設計者を支援する側に回ります。エンジニアリング領域の IT 統括をやるようになり 3D の Viewer も、という話で、そこで鳥谷さんとお会いしました。その時はラティスさんにもお願いして先行投資を抑えて、運用活用の中で償却できるサブスクモデルのようなものを実現していただいた記憶があります。
鳥谷:
そういうこともありましたね (笑)。20年近く前に、サブスクのような料金モデルを構想していたこと自体が驚きですね。
渡邉:
少し時代の先取りをし過ぎていましたかね (笑)。
鳥谷:
渡邊さんは、どのような経緯で SUS さんに移られたのですか。
渡邉:
SUS の社名の由来である Standard Units Supply という考え方、アルミなのに SUS というネーミングに、魅力を感じたのが、まず第一です。社長の石田との何度かの面談を通じて、その思いが強くなって、その後、SUS で仕事をさせていただいているわけです。
鳥谷:
SUS さんと言えばよく日経新聞の一面にも広告が出ていますね。主力製品はアルミ押出フレームでしょうか。最近では、需要の拡大するロボット分野にも進出していると聞きました。
渡邉:
ロボットを使う際の架台でも弊社製品を採用いただけるケースも出てきております。ロボットでものを運搬する際には、どうしても振動が発生するので、その振動をうまく吸収する必要があります。現在は海外の大手ロボットメーカー様の標準架台としても使って頂いております。
それ以外の分野でも、例えば年末年始に恵比寿ガーデンプレイスで展示されるバカラ シャンデリアのアルミ製ショーケースや、駅ホームにある喫煙所や休憩所などの構造建築物。またまた最近ではホームセンターの DCM グループさんを通して、一般のお客様向けにアルミプロダクトを楽しんでもらうことにも挑戦しています。
鳥谷:
ホームセンターでも SUS さんのアルミ商品が買えるのですか。それは存じ上げておりませんでした。SDGs といった観点ではどうでしょうか?
渡邉:
最近ではアルミニウムをリサイクルして再利用したいという要望も大きくなっております。JR 東海様が取り組んでいる新幹線リサイクルプロジェクトにおいてビレットの製造で協力させていただいております。アルミのリサイクルは非常にコスト効果が高い上に、エネルギー的にも、新しく作るのと比べて約 3% で済むのです。
鳥谷:
SUS さんは SDGs の先進企業でもあるわけですね! さて、渡邊さんはDX担当取締役としてもう 2-3年前から DX に取り組まれていますね。DX ブームの前から、世間の先を行ってきたわけですね。その中核がapdX ですよね。これはどういうものなのでしょう?
渡邉:
apdX は、3D でお客様にアルミの構造物を作ってもらうための仕組み (CAD ソフトウェア) になります。各部品は (SUS ではアイテムと呼んでいますが) 構造上の結合ルールを持っているので、そのルールを自動処理してくれるのが apdX となります。
結果として、まるで、お絵かきするような感覚で、フレーム・パーツを自動で連結し、自分が設計したいモデル構造を作成することが出来ます。
鳥谷:
CAD の世界でいうアセンブリモデリングと同じですね。普通は、パーツを正しく 3D 配置していくのは結構面倒です。しかし、パーツ自身が配置のルールを知っているので、迅速に配置できるというわけですね。それは誰でも手軽にデザインができそうです。
渡邉:
お客様に、手軽に簡単に使ってもらえることは非常に重要なポイントで、そのために色々工夫を凝らしました。例えば、パーツ同士が取りつかないところは、apdX 上でも、そのパーツの選択そのものを出来ないようにしてあります。
我々が部品特性を知り尽くしているからこその機能で、お客様からも好評です。また新しく開発・公開される進化したプログラムや新製品データをアプリの起動時に自動的に取得するので、お客様にアップデートの作業をしていただく必要が無くなりました。
鳥谷:
パーツの 3D モデルは SUS さんが提供されるのでしょうか?
渡邉:
はいそうです。SUS の提供するアルミの標準部品を、レゴのパーツだと思ってください、と、私は説明しております。レゴ同様にその組み合わせは無限にあります。何に使い、何を作るのか、お客様自身も必ずしも決まっていなかったりします。apdX を通して、お客様の中にある、その潜在的なニーズを引き出すことができるのです。
鳥谷:
設計をお客様にしてもらうという発想が面白いですね。自社の現場に最適なアルミフレーム筐体はどれが望ましいか、いくつかのイメージを並べて具体化するといった多彩な用途が思い浮かびます。
渡邉:
私達の提供する製品は、フレームの切断・加工を経て、必ず組み立てられ、最終的には付加価値のついた3Dの構造物となります。逆算していくと、最初からお客様のニーズの入った3Dで設計することは、理にかなっていると思っています。そし てapdX でデザインした設計は、法人向けオンラインストア 「ウェブサス」 へ自動でデータが送信され、そのまま見積・発注することができます。
鳥谷:
お客様が欲しいものを自身で、3D でデザインして、そのまま発注までできるというのは素晴らしい!まさに、DX です。
渡邉:
ありがとうございます。apdX のデータは、お客様からの入力情報の一つであり、設計して製品化されていく表の流れと、標準原価など裏側にあるお金の流れの起点となります。「超一気通貫」 と表現しても良いのかもしれません。
鳥谷:
まだリリースから間もないですが apdX の評判はいかがですか。
渡邉:
あるお客様からフィードバックを頂いたのですが、apdX を使うことで、これまで 1日かかっていた作業が、1時間に短縮されたという嬉しい話も聞いています。お陰様でユーザー数は右肩上がりに日々増えております。2022年8月までに 1000人以上の方々にダウンロードしていただきました。
鳥谷:
それは素晴らしい!けた違いの生産性が得られるとあれば、利用者数が右肩上がりになるのも分かります。ところで、弊社の XVL は apdX の中でどのようなところでお役に立っているのでしょうか。
渡邉:
一つは、apdX でモデリングしたものを XVL 形式で出力できるようになっており、無償ビューワの XVL Player をダウンロード頂くことで、関係者や取引先とも 3D データを共有できるようにしているところです。もう一つが、XVL Web3D を採用し、検査も含む一連の組立工程を、ブラウザ経由で、3D で確認し、進められる仕組みを作りました。
鳥谷:
apdX では、ライブラリ機能を追加し、さらに便利に使えるようなったとも聞いています。それはどのようなものなのでしょうか?
渡邉:
これまで蓄積してきた膨大な実績から、基本的な設計事例をライブラリとして公開しました。その結果、お客様がゼロから設計することが不要になり、効率的な設計が可能になるサービスです。先ほどレゴと似ているとお話しましたが、昨今のレゴも、スーパーマリオやスターウォーズの世界観を再現できるセットで売られていますが、そのイメージです。
鳥谷:
最高の知見をユーザー全体で共有するという発想ですね。お客様目線に立たれた素晴らしい機能です。ところで、何故 apdX のようなサービスを構想されたのでしょうか。
渡邉:
SUS の屋台骨は、アルミ製品を提供する点では昔から変わっていません。そこを、時代の変化や会社の進化に合わせて変えていきたいというのが会社の意思です。売上を大幅に伸ばそうと思った際に、従来の部材や、材料を売っている延長線上だけで考えても限界があり、やはり DX 的な発想が必要になります。
鳥谷:
屋台骨であったアルミ部材事業をベースに、部材を組み合わせた製品を販売する事業を創る。その事業を武器に展開するということですね。今後 apdX をどのように拡張させていくのでしょうか。
渡邉:
先ほどの組立工程での活用は社内での使用に留まっているので、今後は協力メーカー様へ展開したり、お客様にも使ってもらったり、と拡げていきたいと思っています。そこに XVL Web3D をもっと活用したいと考えています。
鳥谷:
XVL Web3D は、5G 時代を見据え、Windows、Android、iOS など OS や端末に依存せず、ブラウザ越しに 3D を軽快表示というコンセプトで開発しました。3D モデルを社外展開するのには最適な仕組みです。
実際 Web3D を活用して、福井コンピュータアーキテクトさんでは、キッチンやお風呂といった建材のカタログを 3D で配信し、それを自社 CAD で表示する仕組みを構築されています (参考: SPECIAL 対談記事) 。また 3D を利用したパーツカタログのパッケージの 「CATALOGcreator®」 (ドイツ Quanos社) でも、XVL Web3D を採用して、パーツの形状を 3D で確認し、その確認したパーツを受発注することができるようになっており、ドイツ語圏を中心にデファクトスタンダードとなっています(参考: SPECIAL 対談記事) 。apdX の取り組みは、これらの先進事例に並ぶものですね。
渡邉:
お客様のニーズを引き出し、それに応えるにはどうすればよいか、常に先の先を読んで、日々挑戦しています。
鳥谷:
海外のビジネスに関する造詣も深い渡邊さんに、最後にお伺いしたいのですが、日本の製造業はどこに向かっていくべきだと思われますか。
渡邉:
欧米は GAFA 始め、デジタルなコンピューターサイエンスなどを得意としています。私が感じているのは、日本人は物理現象に基づくエンジニアリングは強いということです。例えばエンジンのような、設計から製造まで阿吽の呼吸で進め、擦り合わせといったところを得意としており、非常に優れています。また、製造現場で自動化できるところもあるけど、複雑な問題には、日本人の洞察力、認知力が役に立つ場面も多いということです。
鳥谷:
IoT を製造現場に導入して大量のデータを集めてもなかなか成果につながらないといった話をよく聞きます。それは現場には、多様なパラメータやノイズののったデータが無尽蔵にあるけれど、それだけでは、AI ですぐぽんと結果が出るモノにはならない。そこに現場の経験や知見が必要になるといったことでしょうか。
渡邉:
仰る通りですね。そういった日本人の強みを発揮できる分野で、今後も貢献できれば良いと思っています。その現場で人間が作業する上では 3D の認知性が圧倒的に高い。だから、これからも 3D の重要性はますます上がっていくでしょう。
鳥谷:
日本の優秀な製造現場の力を 3D で、もっともっと引き出せると良いですね。そこに apdX も大きく貢献していくことでしょう。本日は長時間に渡り、楽しいお話を伺い有難うございました。今後も apdX の発展に寄与し続けるとともに、そのさらなる飛躍を楽しみにしております。
END
・記事内に掲載されている図は SUS株式会社から提供されたものです。
・XVLはラティス・テクノロジー株式会社の登録商標です。その他記載されている会社名および製品名は各社の登録商標または商標です。
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