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SPECIAL 対談|三菱電機エンジニアリング × 立花エレテック × ラティス・テクノロジー
2022年12月13日
2022年
12月
日本流 DX の取り組み方
~ECM 軸の一気通貫を 3D 活用で実現する~
今回の SPECIAL 対談は、三菱電機株式会社 (以下、三菱電機)、三菱電機エンジニアリング株式会社 (以下、三菱電機エンジニアリング) において、海外を含め広い視野で FA 機器の開発設計に関わられてきた三菱電機エンジニアリング株式会社 顧問 尼﨑 新一 様と同社の名古屋事業所 技術推進センター 主管技師長 三田 善郁 様、三菱電機の FA 機器の販売代理店であり、XVL のセールスパートナーでもある、株式会社立花エレテック (以下、立花エレテック) 相談役 山口 均 様、執行役員 FA システム事業本部長 兼 FA システム戦略事業部長 南本 隆吏様および、ラティス・テクノロジー株式会社 代表取締役社長 鳥谷 浩志の 3社で、日本の製造業が Industrie4.0 のドイツをはじめとした海外の製造業と、これからどのように戦っていくべきかについて、お伺いしました。
鳥谷:
本日は、三菱電機エンジニアリングから尼﨑様、三田様、立花エレテックから山口様、南本様にご参加いただき、日本の製造業が、Industrie4.0 のドイツをはじめとした海外勢とどのように戦っていくのかについて、お話を伺えればと思います。早速ですが、尼﨑さんから自己紹介をお願いできますか。
尼﨑:
私は 1981 年に三菱電機に入社しました。制御系の仕事がしたいということと、大阪出身であることで三菱電機に入社しました。入社面接では 「名古屋で 10年ぐらい制御の仕事でどうですか」 という話だったのですが、シーケンサ (PLC) の開発設計に始まり、結局 40年間以上名古屋で FA に携わる仕事をすることになりました (笑)。
鳥谷:
尼﨑さんと初めてお会いしたのは、スマート工場を実現する三菱電機さんの e-F@ctory での取り組みがご縁でしたよね。
尼﨑:
2002年に e-F@ctory 関係の課長となり、出来るだけ多くのパートナーの方々とお会いして、色々な声を聞きたいと思っていました。そんな中、アライアンスの担当から、「EZ Socket パートナーでメカトロ検証ソリューションを持った面白い会社がある」 と紹介してもらいお会いしたのがきっかけですかね。
その時は、メカトロ検証ソリューションもさる事ながら、3D CAD のデータを大幅に軽量化し、そのデータを設計、生技、サービス部門など全社で活用して生産性の向上を図る面白いソリューション (=XVL) があるなあと、感じた記憶があります。
尼﨑:
その節は大変ありがとうございました。
鳥谷:
EZ Socket に対応したことで、三菱電機の PLC を利用しているお客様には、簡単に PLC と接続し、高いパフォーマンスで高速にシミュレーションが実施していただけるようになりました。これは、汎用的な通信規格である OPC (OLE for Process Control) を経由しただけでは実現できませんでした。
尼﨑:
その後、3D CAD のデータを大幅に軽量化する XVL という基礎技術、そしてその 3D を活用するための多彩なソリューションに感銘を受け、ラティスの 「XVL 3次元ものづくり支援セミナー」 に何回も参加し、その出張報告書には事細かに記録した記憶があります。
鳥谷:
尼﨑さんの出張報告書のお陰もあってか、その後、三菱電機様の様々な事業所において XVL および XVL のソリューションを幅広く採用いただいております (笑)。2018年には、弊社のセミナーにおいて、三菱電機様に Vmech の導入事例 をご講演いただきました。
尼﨑:
そのご縁もあり、三菱電機エンジニアリングに移ってからも、三菱電機での 3D データ活用に携わっておりました。名古屋事業所では、加工機・モータ・インバータ等の各 FA 機器の設計・生産領域で XVL を適用していて、三菱電機エンジニアリングに来てからの活動に繋がりました。
この 4月に常務取締役を退任し、現在は三菱電機エンジニアリングで顧問をしております。後程、三菱電機での XVL の活用状況に関しては、三田からお話させていただきます。
鳥谷:
ありがとうございます。それでは、続いて山口さんからも、自己紹介をお願いできますか。
山口:
私も大阪の出身で、大阪本社の立花エレテックに、第一次オイルショックの真っ只中の 1974年に入社しました。NC 装置の担当となり、まさかまさかで東京への配属となりました (笑)。
当時三菱電機の鎌倉事業所で研修を受ける機会があったのですが、工場を案内いただき、その懐の深さと、すそ野の広さを感じたことを鮮明に記憶しています。その後、大阪に戻り、モータ、シーケンサを担当するようになりましたが、三菱電機の代理店の責任者に対するシーケンサの技術研修が 80年代後半にあり、そこで講師を勤められていたのが尼﨑さんでした。
尼﨑:
山口さんとは長いお付き合いですが、そこが出会いだったとは、記憶しておりませんでした (苦笑)。
山口:
当時から尼﨑さんのお名前は鳴り響いていたので鮮明に記憶しております (笑)。2006年からは、東日本の営業本部長になり、再度東京勤務となりました。東京には多くの企業の本社機能があり、各社の方針をいち早く聞くことができました。また東日本のマーケットの大きさも感じることが出来、とても充実した時間を過ごしました。
この 6月からは顧問となり、本日同席している南本に事業を引き継いでいます。現在立花エレテックでは、システム中心の技術商社へと変革をしている途上にあります。
鳥谷:
機器だけを販売するのとシステム販売をするのでは、どのような違いが出てくるのでしょうか。
山口:
弊社では他社に先駆け 1975年に技術本部を立ち上げており、50年近くの技術の積み重ねがあります。三菱電機の FA 機器の持つ強みと、立花の持っている技術力、システムの強みが組み合わさることでお客様により良い提案ができ、その後もお客様との長いお付き合いをすることができるようになります。
鳥谷:
モノ売りから、コト売りと転換されているのですね。
山口:
そういうことになります。
日本の製造業と DX について
鳥谷:
製造業、特に FA 業界においては、少し前まで Induetrie4.0 ということが叫ばれていました。昨今、製造業の DX (デジタルトランスフォーメーション)化ということが声高に言われています。FA 業界の重鎮のお二人はどのように感じておられるでしょうか。
尼﨑:
DX という言葉に取って代わられた感がありますが、デジタル化を進め、情報の見える化を進め、設計・生産・販売・保守・サービスまで ECM* 軸一気通貫で、事業のスピードアップを図ると共に、新しいビジネスモデルを生み出そうというコンセプトがドイツで生まれた Induetrie4.0 の中で打ち出されました。*ECM:Engineering Chain Management
2015年の初めに、日立さんや、IHI さんなどの皆様とご一緒に、ドイツ視察団として、ドイツ官公庁・業界団体や先進企業を訪問して Industrie4.0 を調査しました。ドイツはアメリカや中国を非常に意識しており、GAFA を始めとしたアメリカ IT 企業がデータを全て吸い上げようとすることに警戒心を抱くと共に、中国の低コストな製造に打ち勝つべく、ECM 軸一気通貫での効率化に官公庁が主体となって注力していたことが印象的でした。
また、SAP・Siemens・Trumps・SICK 等のドイツ企業のソフトウェア・工作機械・FA 機器・センサを活用すれば、ECM 軸一気通貫が実現出来るという仕組み自体を輸出するスタイルも図っていたと思います。
鳥谷:
ドイツのどのような点が優れていると感じられましたか。
尼﨑:
設計・生産・販売・保守・サービスの個々について考えているだけでなく、設計・生産・販売・保守・サービスという ECM 軸全体を常に良く考えているという印象が強いです。
また、生産のみで言えば、一品一葉での一個流し生産は、日本の方が進んでいるとも感じましたが、日本は、やり方が各企業においてバラバラで非効率のままですが、ドイツは、ドイツ全体で標準化を進め、自然に効率が上がって行くのが優れていると感じました。
三菱電機では、2003年には 「e-F@ctory」 を打ち出し、Industrie4.0 のコンセプトが出てきたころには、既に生産の効率化を具現化しつつありました。一方、シーメンスなどは自社にない技術、特にソフトウェア会社を買収し、急激に Industrie4.0 のコンセプトを具現化しています。
山口:
そのあたり、欧米は狩猟民族ですよね。お腹がすいたら取りに行く。日本は農耕民族なので、自分たちで種から撒いて、時間をかけて育てようとしますよね。
尼﨑:
おっしゃる通りで、日本の製造業の自前主義ではこのスピード感にはついていけません。
それに加え、例えば、ヨーロッパでは、FA 機器・配制機器・ケーブル等の電機品のデータの標準化を進めようとしています。これは、制御盤や生産設備の設計時に CAD で電機品を配置すると、その標準データベースから 「どこにどのように配線するか」 を自動化するのみでなく、制御盤・生産設備の設計が完了すれば、使用する電機品を自動的に発注する事までしようとしています。その標準データベースに乗っていない電機品は、使えず、排除されてしまう事になります。
鳥谷:
ヨーロッパは標準化、規格化をするのが上手いですよね。
尼﨑:
電気 CAD の業界においても、欧州では電機品の部品ライブラリーを整え、多くの企業が部品ライブラリーを用いることで、設計を大幅に効率化しています。一方日本では、自社が使いやすいようにライブラリーを整えたいという意向があり、各社各様でライブラリーを整え、企業間を跨いだライブラリーの活用が全く進まず、非効率な状態です。
山口:
我々のお客様も、それぞれに構想を持たれており、こういうことが出来るようにして欲しいという個別の要望を受けることが多いです。パッケージにした方が最終的には効率は上がり、お客様にとってもメリットは大きいと思うのですが。
鳥谷:
そのあたりは、日本企業は図面の書き方なども各社各様ですよね。
尼崎:
三菱電機も図面データの書き方は ISO (International Organization for Standardization:国際標準化機構) の規格に沿っているのですが、20年以上前のもので古い図面を持ってやっている。ただし、海外でビジネスをするために、一部事業所や、海外の事業所では、最新の規格に沿ってやっているのが現状です。
鳥谷:
データを標準化することが DX の基礎中の基礎ですね。
尼崎:
おっしゃる通りで、川上から川下まで一気通貫でデータを使えるよう、データ標準を進めて行くべきだと思っています。
鳥谷:
日本はヨーロッパや、中国のように徒党を組むのが上手くありませんね。PLC なども三菱、オムロン、キーエンスとそれぞれの規格を持たれています。
鳥谷:
欧州勢の規格化、オープン化の上手さと自前主義に走る日本。どうして、そのような違いがでると思われますか。
尼崎:
国のリーダーシップの違いはあると思います。
中国や、ヨーロッパでは、政治家の半分が理系で、技術的な事柄への知見・理解があります。日本の官僚は文系が多く、そういった技術への知見・理解が薄いと思います。とはいえ、国の動きを待つだけではだめで、企業自身も IT のリテラシーを上げて、発想を変えていく必要があると思います。
鳥谷:
日本企業の IT リテラシーは、どのような点で変えていく必要があるでしょうか。
尼崎:
例えば、ヨーロッパでは、人件費もコストと考え、ソフトウェアの標準化を進め、人件費を抑えるためにプログラム容量が大きいシーケンサを当たり前に購入します。
一方で日本では、直材コスト低減のためプログラム容量の小さなシーケンサを購入します。その結果、日本の設計者は如何にプログラムサイズを小さくするかに知恵を絞り、そこに明け暮れる結果になります。
もっと大きな変化をもたらすようなことに貴重な人財パワーを使わないと!このようなことをやっていたら、日本は勝てません。
鳥谷:
日本はなかなか 2D の図面文化からも抜けきれませんね。3D 設計をしながらも並行して図面も書いており、後工程にも図面が流れていく企業が少なくありません。
尼崎:
おっしゃる通りで、3D データを、ECM 軸全体に一気通貫で関わらせて全体最適を目指す必要があると思っております。
ヨーロッパでは、3D CAD データが巨大でも高速に快適に使える高価な IT インフラ・高性能パソコンを用意します。日本企業は、通常のパソコンしか準備せず、低速で不快でも我慢します。従って、日本では、CAD データを 1/100 に出来る XVL のような超軽量の 3D データが大変役立つと思っています。
XVL を活用することで、3D データを設計・生産・販売・保守・サービスといった幅広い領域にわたり、一気通貫で使えるようになることは非常に大きな意義を持ちます。
山口:
販社の立場で言わせてもらうと、日本のお客様は、導入する際の対投資効果を非常に気にされます。
尼崎:
かつてパソコンが登場した際にも、パソコンを導入して対投資効果が出るのか議論になりました。
が、紙でやっていたことと比較すると圧倒的に効率があがりました。今では、パソコン導入の対投資効果という話は誰もしません。
大事なのは、効果が出るように改善することで、3D でも同じく対投資効果の議論が無駄なぐらい効果が出せると考えています。三菱電機内でも XVL の活用は進んできております。ここで、その状況を少し説明してもらいますね。
三菱電機・三菱電機エンジニアリングでの 3D 活用状況
三田:
私の方から、三菱電機・三菱電機エンジニアリングでの 3D 活用状況を説明させていただきます。
先ほど尼﨑の方からご説明しましたように、現在 ECM 軸にそって 3D データの活用を進めており、そこで XVL を大いに活用しています。インバータ製品の設計・生産・販売・保守・サービスへの XVL 活用による ECM 軸一気通貫での効率化から始め、他の様々な製品や業務領域での 3D 活用の拡大・浸透を図っております。
一連の活動の一環で PDM に XVL データを登録して、超軽量な XVL を無償ビューワで見ることができるようにもしています (参照-図1)。
鳥谷:
3D の XVL データに、様々な部門の方が簡単にアクセスできる環境を構築するというのは、全社で 3D を活用する XVL パイプラインでの一丁目一番地です!
三田:
XVL を簡単に参考に出来る環境を整えたことから、早速成果は出ています。例えば、高性能なパソコンを持たないサービス部門でも簡単に 3D 形状の確認ができるようになり、発注ミスの低減、修理業務効率化に寄与しております (参照-図2、図3)
まだ取り組み途中ではあるのですが、3D での組立図や組立アニメーションやサービスパーツリストなどなど、名古屋事業所の中で設計業務や、組立業務、そして保守・サービス支援に至るまで、様々な領域において XVL の適用を始めております。
また、工場レイアウトや搬入出の検討における現場でスキャンした 3D 点群データ活用や、組立性の検証での VR 活用も進めて行く予定です。
鳥谷:
全社一気通貫で 3D を活用して業務革新をする XVL パイプライン構想そのものです。3D の活用範囲が広がれば広がるほど、先ほど議論のあった投資対効果がどんどん改善していきます。今後が非常に楽しみです。
山口:
三菱電機さんと、ラティスさんの双方の代理店をしている私たちにとって、素晴らしいお話ですね。
三田:
インバータ事業での取り組みにつきましては、三菱電機エンジニアリングの MEE エンジニアの論文でも 「設計 3D データの ECM/SCM プロセスでの一気通貫活用」 というタイトルで発表しております。そちらも是非ご覧いただければと思っております。
3D 活用を促進するポイント
南本:
ラティスさんの代理店になり、お客様にお伺いすると、中には既に XVL を導入されているお客様が多数おられます。一方、なかなか十分に 3D 活用できてないお客様が多いのも事実です。
鳥谷:
それは、どこに問題があるのでしょうか。
南本:
部門を跨いだ協力が得られれば得られるほど、また活用の範囲が広がれば広がるほど、XVL の導入効果が大きくなります。
しかし、部門間の利害は必ずしも一致しないので、部門を跨いで協力を得るには、相応のパワーと全体最適を目指す視点が必要になります。そのこともあり、今後はどんどん経営層に対して、アプローチしていこうと考えております。
鳥谷:
DX という観点では経営層の理解は必須ですね。同時に、現場の理解を得ながら、成功体験を持つことも重要です。
南本:
おっしゃる通りで、スモールスタートで良いので、現場で小さな成功を積み重ねていくことも非常に重要です。この成功のループを繰り返すことで、お客様の信頼を勝ち取れ、企業丸ごとスマート化を進めて行けると思っています。
尼﨑:
あとは現場の推進者を巻き込んでいくことも重要です。先ほどお話した弊社での取り組みでも、同じような主旨の論文を書いていた中堅社員が、これだと思い、その社員をこの取組みに引っ張り込みました。
南本:
我々も、モノ売りからコト売りに変革しており、これからはお客様にメリットが出てくるところまで、入り込んでビジネスを進めて行く必要があるとの思いを強くしております。
鳥谷:
最後に日本の製造業に向けて一言メッセージをいただければと思います。
尼﨑:
本日お話してきたところの繰り返しにはなりますが、トータルコストを削減するために IT 活用・デジタル化をどんどん推し進めていく必要があると感じています。
ECM 軸でのデータ伝達をスムーズにすることで、日本が得意な擦り合わせを 3D デジタル上で実施できるようにして、優位性を築けると考えています。3D CAD は高価なインフラながら日本企業も投資してきています。が、ECM 軸で利用するには適していません。
一方 XVL は比較的安価な投資で、ECM 軸で利用しやすく非常に効果が高いと思っています。ラティスさんと、立花エレテックさんには、どんどん XVL の良さを製造業の方々に伝えて欲しいと思っています。
山口:
尼﨑さんにご指摘いただいたように、まだまだ XVL の良さをお客様に伝えきれていないと思っています。ラティスさんにもご協力をいただきながら、私達自身で、その活用シーンやメリットをわかりやすく伝えて行く必要があると感じています。
是非とも日本の製造文化を変えて、製造業の DX まで一緒に取り組みたいです。
鳥谷:
本日は長時間に渡り、ありがとうございました。3社で連携して、日本の製造業の DX を必ず成功させましょう。
END
・記事内に掲載されている図は三菱電機エンジニアリング株式会社から提供されたものです。
・XVLはラティス・テクノロジー株式会社の登録商標です。その他記載されている会社名および製品名は各社の登録商標または商標です。
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