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SPECIAL対談|大塚商会 × ラティス・テクノロジー

2023年8月16日

2023年
8月

3Dをつくり、ためて、つかうことで実現する製造業のDX
~「製造業DXを3Dで実現する」ためのヒント~

3D CADシステムの国内売上実績、世界・アジア取引額、国内代理店販売実績と3つのNo.1*の称号を持つ株式会社大塚商会(本社:東京都千代田区、ttps://www.otsuka-shokai.co.jp/、以下、大塚商会)。2001年に同社が運営するCAD情報サイト「CADJapan.com」でXVLソフトの提供を開始して以来、20年以上にわたりXVLセールスパートナーとして多くの製造業にXVL導入支援を行う同社と、「製造業DXを3Dで実現する」ためのヒントについてディスカッションを行いました。
*参照:https://www.cadjapan.com/special/cad-in-numbers/

株式会社大塚商会、ラティス・テクノロジー株式会社

鳥谷:
大塚商会さんは、長年3D CADの世界No.1ディーラーで、また、ラティスのXVLソリューションも扱っていただいています。その営業部門を率いてきた武藤さんと、製造業のDXをどのように促進していくのかという議論をできる今日の場を、非常に楽しみにしておりました。

武藤:
これまで私たちは、3D CAD、CAEやCAM、3Dプリンター、そしてPLMなど3Dに関わるビジネスを長年行ってきており、3Dを“つくり”、それを“ためる”ということに関しては、お客様と一緒に取り組んできたと自負しております。これから3Dを“つかう”ということも一層強化し、3D設計から3Dデータ活用に至るまでのソリューションを一貫して提供し、お客様の変革をご支援できればと考えております。

3Dを活用した、製造業DX実現のためのソリューション(画像提供:大塚商会)

今日は3Dを“つかう”ソリューションと、その知見を豊富に持たれているラティスの鳥谷さんとお話しできることを、私も楽しみにしておりました。大塚商会のプロモーション、サポート含めCAD部門一丸となって取り組みたいという意図でプロモーションの鎌田さん、三本さん、サポートの内海さんにも参加してもらいました。

鳥谷:
ご調整ありがとうございます。早速ではありますが、会社の紹介と自己紹介をお願いできますか。

武藤:
大塚商会ですが、1961年の創業以来一貫してお客様の情報化、業務効率化を支援しております。特定のメーカーにこだわらないマルチベンダー対応、そしてオフィス用品からIT機器全般まで幅広く取り扱っており、ワンストップでソリューションとサポートをお届けしております。私は営業職として仕事をしてきましたが、2000年頃に千代倉先生の発表を聞かせていただいた際に鳥谷さんとお会いしたのがファーストコンタクトになりますね。

鳥谷:
武藤さんとは、もう20年来の戦友ということですね(笑)。昨今ほとんどの製造業が3D CADを導入し、3D設計が当たり前になっている中で、まだ本当の意味で3Dを活用したDXは立ち上がっていないと私は見ています。そのあたりはどのようにお感じでしょうか。

武藤:
何をもって3D の立ち上げとするかという定義ははっきりさせる必要があるでしょう。3D CADは広く普及していますが、3D設計はまだ2割程度。そして3Dを全社でつかうという観点では、できている企業は、まだまだ少ないというのが実情でしょう。

鳥谷:
3Dが導入されているのに、全社で活用されていないのはどこに原因があるのでしょうか。

武藤:
それは3D導入に際して、機能に関してはいろいろ議論するが、導入した後にどのようにつかい、どこを目指すかという議論やコンセンサスが不十分なのではないかと思っています。かつて弊社のセミナーでご登壇いただいたお客様が、3D CADはパスポートだと表現されていたことがあり、私は非常に強い印象を受けました。

鳥谷:
確かに、パスポートは分かりやすい表現ですね。パスポートを取得することは、海外に出て入国するために必要不可欠です。しかし、どこの国に何をしに行くのか目的がなければ、取得すること自体には意味はないですものね。

武藤:
我々も3Dの導入をお客様と進める中で、目指すべきゴールや、その次のステップをご提案まであまり踏み込めていなかったと反省しております。

鳥谷:
私はプロモーションの観点で情報を集めており、ものづくり白書に目を通す中で、2022年版において、従来働き方改革や社内コミュニケーションの文脈で行われてきたデジタル投資が、ビジネスモデルの変革という大きな文脈の中で行われるようになっていると記載されていました。

内海:
営業サポートをしている、私たちの現場感覚とも合致しており、経営者の意識が変わってきていることを感じています。

鳥谷:
私は分かりやすくするために、社内プロセスを変えるのがDX(Digital Transformation)、ビジネスモデルを変えるのがBX(Business Transformation)と区別して話をしています。そう考えるとアメリカのITベンチャーではBXが多い。もう老舗になりましたがAmazonなどは、BXの典型的な例となります。

武藤:
我々のターゲットの製造業は、ものを作っているのでBXは簡単にはいかないですよね。

鳥谷:
まさしくその通りで、製造業の場合はBXに一足飛びに行くのではなく、まずDXを進めるのが先だと考えています。日本の製造業の良さでもある、現地現物や図面といった既存文化を活かしつつ、そこのDXを進めていく、その先にBXが来るのではないでしょうか。武藤さんはどう感じておられますか。

武藤:
最近では多くの企業がDXに取り組まれていますが、企業によりかなり濃淡ははっきりしています。そんな中、DXに真剣に取り組まねば、企業の存亡にかかわるという危機感をもって真剣に取り組む企業が少しずつですが、出てきたと感じています。

鳥谷:
しっかりとDXに取り組んでいる企業に特徴はあるのでしょうか。

武藤:
トップダウンでDXに取り組もうとしている企業は、しっかりと活動されている企業が多いと感じています。逆に鳥谷さんにお聞きしたいのですが、鳥谷さんは「製造業のDXを3Dで実現する」という著書も出されており、色々な方とDXについて議論されていますよね。鳥谷さんの考えるDXとはどのようなものですか。

鳥谷:
3DでDXを実現するという観点でお話をすると、PLMだけでは、3Dデータの活用はCAEやCAMといった設計周辺に留まり、設計のDXにしかならない。そう考えるとPLMの後に来るダウンストリームのDXが必要です。設計DXとダウンストリームDXの両方があって、3Dを活用した製造業のDXが実現できると考えています。ラティスでは、ダウンストリームに実機や紙図面を置き換える軽量3DデータXVLを流通させることを提案しています。このデータ流通の仕組みをXVLパイプラインと称し、それを実現するシステムも提供しております。ダウンストリームDXは、さらに、生技DX、サービスDX、工場DXへとブレイクダウンされ、それぞれのDXに対しソリューションの提供しております。

製造業DX×3Dとは3Dデジタルツインの流れをつくること

武藤:
冒頭にお話しした、まさしく3Dを“つかう”という領域のお話ですね。せっかく作った3Dデータを、営業や、保守、製造部門などで、擦り切れるまで活用しないと勿体ないという我々の問題意識とも合致します。

鳥谷:
先日IT企業の役員の方とDXについて議論したのですが、DXの本質はデータを共有して活用することではないかという結論にたどり着きました。

武藤:
DXの本質がデータを共有し、そこを推進するということであれば、3DおよびXVLが必要だということがよく分かります。先ほどお話された生技DX、サービスDX、工場DXというのは具体的にどのようなものなのでしょうか。

鳥谷:
生技DXの成功事例は、どんどんと蓄積されてきています。先日は、建機を作っている株式会社竹内製作所様にラティスのイベントで事例発表(参考:コラム)をいただいたのですが、上流では3次元設計をしっかりやって、PLMにデータを蓄積し、BOMと3Dは統合されていました。その状況のもと、XVLを用いて工程設計をデジタルで行うことで、現場で起こっていた問題を、3D上で早い段階でつぶしこんでいます。また3Dの作業指示書をWebでグローバルに展開し、それをタブレットで見るようにして、海外生産拠点を含め生産性を大幅に向上されました。

武藤:
まさしくデジタルツインを作って、実機の代わりにデジタルで検証するというお話ですね。

鳥谷:
私たちは実機を置き換え可能な3Dモデルを「3Dデジタルツイン」と呼んでいるのですが、それが現実の世界になりました。昨年講演いただいたガソリンの計量機器の株式会社タツノ様の取り組み(参考:イベントレポート)はサービスDXの好例です。これからのEVの時代に備えて、柔軟に対応できるシステムをということで3Dデータ活用の取り組みを始められました。株式会社図研プリサイトが提供するVisual BOMという仕組みを使い、PLMデータに対してサービスBOMを含むBOM構造をしっかりと定義され、ラティスの提供するXVL Web3Dの技術を使ってサービスコンテンツの配信システムを作られました。それが出来ますと、サービスパーツの受発注システムやWebショップができるわけで、まさしくDXからBX。すなわちビジネスの変革へと取り組まれている事例となっています。

武藤:
XVLを使って生技DXでは、製造BOM、サービスDXでは、サービスBOMを作るというのが肝ということですね。両社の事例とも、全社最適にかなった素晴らしい3Dの活用法で非常に参考になります。

鳥谷:
工場DXに関しては、最近、3D CADでも普及し始めたセマンティックなPMIの情報をXVLに変換して持ってこれるように取り組んでおります(参考:プレス)。これまで紙図面上に記載されていた、幾何公差も3D図面上で確認できるようになります。設計は2D図面作成から解放され、情報流通の速度は格段に上がり、サプライヤは必要な情報を3D図面で的確に把握できるようになります。軽量3DのXVLを活用した3D正の取り組みが先進的なお客様で始まっております。

鎌田:
自動車業界でも、3D正の世界はまだ緒に就いたばかりと聞いており、普及には時間がかかると思っています。一方、そういった3Dを活用する文化が製造業で根付いてから、企業の中で3D設計を進めましょう、3D文化を醸成しましょうでは手遅れになります。つくる、ためるという私たちが従来から得意としている領域に関しては、しっかり促進して、3Dをつかうという場面に向かって、足場を固めていきたいです。

鳥谷:
3D図面に関しては、サプライヤの嬉しさは何なのかを先進メーカーと突き詰めている最中です。これが明らかになって今後普及していくということを想定すると、3D正の世界は確かに十年単位の時間が必要になるかもしれませんね。

武藤:
私たちは、3D正や全体最適を目指す動きは一足飛びにはいかないので、全体最適を意識しながらも、部分最適を図っていくカジュアルな全体最適を目指せればと思っています。

鳥谷:
おっしゃる通りで、全体最適は短期間で達成できるものではなく竹内製作所様、タツノ様ともに数年がかりで取り組まれており、現在もさらにその先に向かってチャレンジされています。大事なことは、早く取り組みを始め、成功を積み重ねながら、他社より少し先を行くことが競争戦略上は優位でしょう。そのためにも、大塚商会さんには、“つかう”の土台作りとして、3D CADの普及、即ち“つくる”、“ためる”というところに、ご尽力いただきたいと思っています。

内海:
鳥谷さんのおっしゃられたように“つかう”ためには、その前段階として、真の3D設計への取り組みが重要だと考えています。そこを推進していくためには、我々サポートメンバーの役割は非常に重要だと考えております。ここ数年3Dの活用ステージまで進んだお客様も増えてきております。中には、XVLのWeb3D技術を使って、タブレットで自社製品を見るという先進的な取り組みに挑んでいるお客様も出てきており、私たちの中でも事例と知見が蓄えられてきています。

武藤:
今日鳥谷さんとお話しする中で、3Dを活用してDXを進めていく上で多くのヒントを頂くことができましたので、こちらを是非社内でも共有していきたいと思います。3Dを活用することの目的や、ゴールをお客様と共有した上で、より一層3Dを“つくる”、“ためる”、そして“つかう”の3拍子をお客様と進め、日本の製造業のDXに貢献できればと思っております。

鳥谷:
3Dをつくり、ためて、つかうというのは、まさに製造業のDXを3Dで実現することそのものです。世界で一番3D CADのお客様を持つ大塚商会さんと3Dを使ったDXを推進することは日本の製造業に大きなインパクトを与えられると確信しています。今後が本当に楽しみです。本日は貴重なお時間をいただきありがとうございました。

END

【用語解説】

  • 製造業DX×3D:「製造業DX×3D」とは、現地現物のすり合わせや図面を読み解く現場力が必要な日本の製造業(=デジタル家内制手工業)に対して、XVLパイプラインによる3Dデジタルツインのデータの流れをつくることで、製造業全体でデジタルで擦り合わせが行われ、デジタルで現場力が強化されるという、日本の製造業の強みをデジタルで引き出すという考え方。
  • XVLパイプライン:「XVLパイプライン」とは、3Dデジタルツインの情報の流れをつくり、組織の垣根を超えてその情報を徹底活用することでDXを推進する仕組みのこと。
  • Casual3D:「Casual3D」とは、製造業おいて「どこでも、いつでも、だれでも」3Dデータが身近にあり活用できる世界のこと。ラティス・テクノロジー株式会社が目指す世界。
  • 3Dデジタルツイン:「3Dデジタルツイン」とは、現物と図面の双子となる3Dモデルのこと。現地現物を軽量XVLで表現し、図面情報情報をXVLに集約することで、現物に近い3Dモデル(=3D形状+構成情報+ものづくり情報)になるという考え方。ラティス・テクノロジー株式会社の登録商標です。

【その他】

  • ・XVL、3Dデジタルツインはラティス・テクノロジー株式会社の登録商標です。その他記載されている会社名、製品名など名称は各社の登録商標または商標です。

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